たんぱく質が多く、脂肪は少なめ、カリウムなどのミネラルが豊富なかじき類は、食材としてとても優秀な魚のひとつです。
同じかじきでも、めかじき・まかじき・くろかじきでは含まれる栄養素はそれぞれ異なり、風味も違います。合う料理法や食べ方もそれぞれ。献立を考えるときなどに、以下にご紹介する栄養成分をぜひ参考にしてください。
めかじきが特に多く含む栄養素
・ドコサヘキサエン酸
・カリウム
・ビタミンD
・グルタミン酸
かじきが含む栄養素
・一般成分(水分・たんぱく質・脂質・炭水化物・灰分)
・ミネラル(無機質)(カリウム・カルシウム・鉄分・マグネシウム など)
・ビタミン(ビタミンA、ビタミンB、ビタミンCなど)
・脂肪酸(EPA[エイコサペンタエン酸]、DHA[ドコサヘキサエン酸]など)
・アミノ酸(イソロイシン、ロイシンなど
ドコサヘキサエン酸(DHA)
DHA(DocosaHexaenoic Acid: ドコサヘキサエン酸)は多価不飽和脂肪酸の一種で、EPA (エイコサペンタエン酸) と同様、主に魚に含まれる必須脂肪酸の一つです。 DHAは血液中のコレステロールや中性脂肪を減らす働きがあり、脂質異常症や動脈硬化の予防・改善の効果が期待できます。 また、脳の神経細胞の働きに関係している脂肪酸であるとされ、脳の働きを活発にする栄養素としても知られています。
「日本人の食事摂取基準」(2010年版)では、生活習慣病予防の観点から、18歳以上のすべての年代でDHAとEPAを合わせて1g以上摂取するのが望ましいとされています。DHAに脂肪燃焼の効率を高める効果があるのは広く認められていて、肥満の抑制についても効果のあることが最近の研究結果で示されています。
※ドコサヘキサエン酸は脂質なので、摂りすぎると肥満につながります。他の栄養とともにバランス良く摂取しましょう。
ドコサヘキサエン酸含有量比較
カリウム
カリウム(Kalium)はミネラル(無機物)の一種で、野菜・いも類・果物などに多く含まれており、一般的にはナトリウム(塩分)の排出を促し血圧を正常に保つ成分としてよく知られています。高血圧やむくみ予防に効果があるとして挙げられる成分です。
成人の場合で体重の約0.2%を占めていて、カルシウム・リン・ナトリウム・マグネシウム・イオン・塩素などと共に「主要無機物」 に分類され、他のミネラルと比べると体内に多く存在します。
カリウムの多くは、細胞の中の液(細胞内液)に含まれていて、細胞外液に多いナトリウムと作用し合いながら、細胞の浸透圧を維持したり、水分を保持したりしています。また、ナトリウムが腎臓で再吸収されるのを抑制し、尿への排泄を促す働きがあります。カリウムは過剰摂取しても尿に排泄されるので過剰小になることはありません。しかし、腎機能が低下して尿の排泄が困難になると、高カリウム血症を起こす場合があるので、腎臓の弱い方は過剰摂取に注意が必要です。
食事で摂取することは難しくない成分ですが、ミネラルは全般的に食品の精製や加工によって失われやすい成分のため、食生活が外食や加工食品中心の人はミネラル不足に注意が必要です。また最近では、気をつけていないとナトリウムの摂取量が増加してしまう傾向にあるため、その排泄を促すミネラルとしてカリウムが注目されています。
カリウム含有量比較
ビタミンD
脂溶性ビタミンの1つ。成長促進、特に骨や歯にカルシウムの沈着を促すビタミンです。小腸でカルシウムの吸収を促進させたり、腎臓での再吸収を促す働きがあります。
現代日本では、日焼け防止などによる日照不足や、加齢による皮膚での合成量低下といった理由で、多くの人がビタミンD不足に陥っていると考えられています。
2012年時点で、日本では摂取目安量は男女とも成人の場合で1日あたり5.5μg、上限量は50μgです。21世紀に入ってから、ビタミンDと健康についての研究は飛躍的に進みました。特に、ビタミンDと免疫・生活習慣病や精神疾患などとの関連の研究結果を受けて、アメリカを含めて世界の多くの国では、摂取目安量を大幅に増やしています。例えばアメリカでは、成人の目安量は15μgで、70歳以上では20μg、上限量は100μgです。もちろん、それをそのまま日本人にあてはめるわけにはいきませんが、少なくとも現時点での摂取目安量を下回らない食生活を心がけたいものです。
毎日の食卓に、ビタミンDを豊富に含む魚介類はおすすめです。
ビタミンD含有量比較
グルタミン酸
うま味物質の代表的存在であるグルタミン酸は、たんぱく質を構成する20種類のアミノ酸の一つです。
うま味物質としては、アミノ酸系のグルタミン酸の他に、核酸系のイノシン酸、グアニル酸も有名ですが、うま味物質は単独で使うよりも、アミノ酸系のグルタミン酸と、核酸系うま味物質(イノシン酸やグアニル酸)を組み合わせることで、うま味が飛躍的に増すことが知られています。これらのうま味物質はさまざまな食品に含まれています。グルタミン酸は昆布や野菜などに、イノシン酸は魚や肉類に、グアニル酸はきのこ類に多く含まれています。食材を上手に組み合わせると、食事がより楽しみになりますね。
グルタミン酸は食べ物のおいしさだけでなく、運動時の疲労の回復を促進するなど、身体にとっても良い効果が多く報告されているので、積極的に摂りたい栄養素の一つ。普通の食生活であれば不足することはあまりありませんが、食事の栄養バランスが偏っていると不足することもあります。グルタミン酸が不足すると、脳の働きが低下したり、排尿阻害が引き起こされるなど恐れがあります。栄養バランスの整った食事を心がけましょう。
※過剰症としては、睡眠障害や神経症などの例が報告されています。
グルタミン酸含有量比較
一般成分
「一般成分」とは水分、たんぱく質、脂質、炭水化物及び灰分を指します。かじき類は良質な脂質とたっぷりのたんぱく質を含む優秀な食材です。
名称 | 単位 | メカジキ | マカジキ | クロカジキ |
---|---|---|---|---|
エネルギー | kcal | 141 | 115 | 99 |
kJ | 590 | 481 | 414 | |
水分 | g | 73.6 | 73.8 | 75.6 |
たんぱく質 | g | 18.3 | 23.1 | 22.9 |
脂質 | g | 6.7 | 1.8 | 0.2 |
炭水化物 | g | 0.1 | 0.1 | 0.1 |
灰分 | g | 1.3 | 1.2 | 1.2 |
※いずれも、可食部100gあたり(生・皮なし)の栄養です。
ミネラル(無機質)
「ミネラル」には、骨や歯、筋肉や脂質の成分となって体の組織を構成したり、血液や体液のpH(ペーハー)や浸透圧を正常に保ったり、酵素の補助因子やホルモンの成分となって、体の調子を整えたりする働きがあります。
必要量はわずかですが、ミネラルは体内で合成されず、体内に貯蔵できないものが多く、毎日の食事からとる必要があります。しかし、吸収されにくかったり、他の成分によって吸収を妨げられたりすることがあるので注意が必要です。
かじき類はカリウム、鉄、リンなどを多く含んでいます。
名称 | 単位 | メカジキ | マカジキ | クロカジキ |
---|---|---|---|---|
ナトリウム | mg | 61 | 65 | 70 |
カリウム | mg | 430 | 380 | 390 |
カルシウム | mg | 3 | 5 | 5 |
マグネシウム | mg | 27 | 35 | 34 |
リン | mg | 250 | 270 | 260 |
鉄 | mg | 0.5 | 0.6 | 0.5 |
亜鉛 | mg | 0.7 | 0.6 | 0.7 |
銅 | mg | 0.04 | 0.04 | 0.03 |
マンガン | mg | 0.01 | 0.01 | 0.01 |
ヨウ素 | μg | 15 | 11 | - |
セレン | μg | 56 | 55 | - |
※いずれも、可食部100gあたり(生・皮なし)の栄養です。
ビタミン
「ビタミン」は、体の調子を整える働きをします。13種類あり、体内での働きは種類によって異なります。
必要な量は少ないのですが、人の体の中で作ることができなかったり、作られても量が十分ではなかったりするので、毎日の食事の中で摂る必要があります。
かじき類には、ビタミンD・ビタミンB12・ナイアシン・ビタミンEが多く含まれています。
名称 | 単位 | メカジキ | マカジキ | クロカジキ |
---|---|---|---|---|
レチノール | μg | 52 | 8 | 2 |
ビタミンD | μg | 11.0 | 12.0 | 38.0 |
α-トコフェロール | mg | 3.3 | 1.2 | 0.9 |
ビタミンB1 | mg | 0.05 | 0.07 | 0.05 |
ビタミンB2 | mg | 0.05 | 0.07 | 0.06 |
ナイアシン | mg | 6.9 | 10.4 | 13.5 |
ビタミンB6 | mg | 0.32 | 0.44 | 0.44 |
ビタミンB12 | μg | 1.9 | 4.3 | 1.5 |
葉酸 | μg | 5 | 5 | 6 |
パントテン酸 | mg | 0.38 | 1.25 | 0.29 |
ビオチン | μg | 2.5 | 13.1 | - |
ビタミンC | mg | 1 | 2 | 1 |
※いずれも、可食部100gあたり(生・皮なし)の栄養です。
脂肪酸
「脂肪酸」とは、食品の脂質(脂肪)の成分で、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。飽和脂肪酸(主に動物性脂質)の過剰摂取は生活習慣病の発症要因となるので注意が必要です。
不飽和脂肪酸(主に魚類・植物性の脂質)のうち、リノール酸(LA)、α‐リノレン酸、アラキドン酸は、必須脂肪酸で食品からの摂取が必要とされています。
魚油の成分であるEPAには血栓予防作用があり、DHAは記憶力低下の防止や認知症の改善、知能発達などに効果的と言われています。
かじき類には、DHAが豊富に含まれています。
名称 | 単位 | メカジキ | マカジキ | クロカジキ |
---|---|---|---|---|
脂肪酸総量 | g | 5.23 | 1.34 | 0.12 |
飽和脂肪酸 | g | 1.44 | 0.47 | 0.04 |
一価不飽和脂肪酸 | g | 2.84 | 0.35 | 0.02 |
多価不飽和脂肪酸 | g | 0.94 | 0.52 | 0.05 |
コレステロール | mg | 71 | 46 | 48 |
食塩相当量 | g | 0.2 | 0.2 | 0.2 |
n-3系多価不飽和脂肪酸 | g | 0.80 | 0.44 | 0.04 |
n-6系多価不飽和脂肪酸 | g | 0.14 | 0.09 | 0.01 |
ミリスチン酸 | mg | 130 | 55 | 2 |
ペンタデカン酸 | mg | 32 | 12 | 1 |
パルミチン酸 | mg | 940 | 250 | 24 |
ヘプタデカン酸 | mg | 41 | 17 | 1 |
ステアリン酸 | mg | 290 | 230 | 12 |
アラキジン酸 | mg | 15 | 5 | - |
ミリストレイン酸 | mg | - | 1 | - |
パルミトレイン酸 | mg | 230 | 60 | 3 |
ヘプタデセン酸 | mg | 48 | 9 | 1 |
オレイン酸 | mg | 2100 | 240 | 15 |
イコセン酸 | mg | 370 | 27 | 1 |
ドコセン酸 | mg | 49 | 4 | - |
テトラコセン酸 | mg | 73 | 10 | 1 |
(n-6)リノール酸 | mg | 40 | 16 | 1 |
(n-3)α-リノレン酸 | mg | 12 | 6 | - |
(n-3)オクタデカテトラエン酸 | mg | 6 | 6 | - |
(n-6)イコサジエン酸 | mg | 16 | 6 | - |
(n-6)イコサトリエン酸 | mg | 5 | 2 | - |
(n-3)イコサテトラエン酸 | mg | 22 | 8 | - |
(n-6)アラキドン酸 | mg | 58 | 39 | 6 |
(n-3)イコサペンタエン酸 | mg | 110 | 61 | 4 |
(n-3)ドコサペンタエン酸 | mg | 120 | 46 | 1 |
(n-6)ドコサペンタエン酸 | mg | 24 | 24 | 5 |
(n-3)ドコサヘキサエン酸 | mg | 530 | 310 | 36 |
※いずれも、可食部100gあたり(生・皮なし)の栄養です。
アミノ酸
「アミノ酸」は体の源となる栄養成分で、身体のさまざまな機能を担っています。また、体を作っているたんぱく質は、20種類のアミノ酸からできていて、アミノ酸が不足すると、成長障害や重篤な場合には生命に影響を与えることなどもあります。
かじき類は各種アミノ酸をたっぷり含む、優秀な食材です。
例えば、バリン、ロイシン、イソロイシンという3つのアミノ酸は、運動時の持久力を高めたり、疲労感を軽減する効果がある可能性を示唆する研究報告もあります。かじきは、いくつかのアミノ酸が結合した「イミダゾールジペプチド」を豊富に含み、注目を集めています。(※イミダゾールジペプチドは、疲労回復・運動能力向上・老化防止・生活習慣病の予防、改善に効果があるとされている物質です。)
名称 | 単位 | メカジキ | マカジキ | クロカジキ |
---|---|---|---|---|
イソロイシン | mg | 912 | - | 1100 |
ロイシン | mg | 1609 | - | 1700 |
リシン | mg | 1818 | - | 1900 |
メチオニン | mg | 586 | - | 640 |
シスチン | mg | 212 | - | 270 |
フェニルアラニン | mg | 773 | - | 810 |
チロシン | mg | 668 | - | 700 |
トレオニン | mg | 868 | - | 910 |
トリプトファン | mg | 222 | - | 260 |
バリン | mg | 1050 | - | 1200 |
ヒスチジン | mg | 583 | - | 1800 |
アルギニン | mg | 1185 | - | 1300 |
アラニン | mg | 1198 | - | 1200 |
アアスパラギン酸 | mg | 2028 | - | 2000 |
グルタミン酸 | mg | 2956 | - | 2900 |
グリシン | mg | 950 | - | 1100 |
プロリン | mg | 700 | - | 760 |
セリン | mg | 808 | - | 750 |
アミノ酸合計 | mg | 19096 | - | 21000 |
※いずれも、可食部100gあたり(生・皮なし)の栄養です。
参考資料
・農林水産省 知っておくと便利です。食品に含まれる成分
・文部科学省 日本食品標準成分表2010
・文部科学省 日本食品標準成分表2010準拠 アミノ酸成分表
・文部科学省 五訂増補 日本食品標準成分表 脂肪酸成分表編
・厚生労働省 「日本人の食事摂取基準」(2010年版)
・アメリカ合衆国農務省 「Agricultural Research Service United States Department of Agriculture」